2026年6月6日、イコモスが「飛鳥・藤原の宮都」を世界文化遺産に登録するよう勧告しました。正式決定は2026年7月、韓国・釜山での世界遺産委員会で審議される見込みです。橿原市・桜井市・明日香村にまたがるこの登録は、地域にとって大きな転機。そして、地域で商いを営む事業者にとっては、来訪者の増加を商機に変える準備を始める「合図」でもあります。橿原を拠点とする私たちINVOLVEが、今こそ取り組みたいデジタル対策を整理しました。
データで見る「今が好機」の理由
インバウンド需要は記録的な伸びを見せています。訪日外国人の旅行消費額は2025年に9兆4,559億円(前年比+16.4%)と暦年で過去最高を更新しました(観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年速報)。奈良県でも2024年の延べ宿泊者数が329万人と、2009年の統計開始以来の過去最多を記録しています(奈良県「県宿泊統計調査」)。一方で奈良は日帰りの「素通り」が多く、滞在や消費にはまだ大きな伸びしろがあるとも言われてきました。世界遺産登録は、この伸びしろを地域の事業者の売上へと変える、またとない追い風になります。
これまでの奈良インバウンドは「奈良市」に集中していた
ここで、地元だからこそ見えている重要な視点があります。これまで奈良を訪れる外国人観光客の多くは、鹿や東大寺、春日大社といった奈良市内の世界遺産に集中してきました。実際、奈良市を訪れた外国人は2024年に297.7万人(前年比+61.4%、奈良市「2024年 観光入込客数調査」)と急増していますが、その流れは奈良市内に偏ってきたのが実情です。一方、橿原から南に広がる南大和エリア——飛鳥・明日香をはじめとする一帯は、歴史好きの間で「知る人ぞ知る」存在にとどまり、本格的な外国人対応を経験する機会は決して多くありませんでした。
しかし、世界遺産登録はこの構図を大きく変えます。これまで奈良市に向かっていた来訪者の流れが、構成資産のある南大和エリアへ一気に広がる可能性があるからです。つまりこの地域の事業者は、これまで経験したことのない規模の外国人対応を、近い将来求められるかもしれません。観光庁の「令和6年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート調査」を見ると、その備えがまだ十分でないことがわかります。同調査では、多言語表示を「便利だった」と感じた訪日客の割合は地方部で59%にとどまり、都市部の88%を大きく下回りました。
さらに、訪日客が言葉や多言語表示で困った場所として、都市部・地方部を問わず最も多く挙がったのが「飲食店」で、困った人の約3割は「解読や会話をあきらめた」と回答しています(いずれも同調査)。対応の有無が、そのまま機会損失につながっているのです。とりわけ飲食店では、メニューの多言語化が「あれば親切」から「ないと選ばれない」へと変わっていくでしょう(実際、調査には「メニューが手書きで翻訳アプリでも訳しにくい。事前に調べていけば大丈夫」という訪日客の声も寄せられています)。多言語のWebサイトや多言語メニュー、翻訳アプリの活用といった受け入れ準備を今から始める意義は、すでにインバウンド対応が進んだ奈良市以上に大きいのです。
業種別に見る、南大和の事業者が備えたいこと
「何から手をつければ」と迷ったときの目安として、業種別に整理しておきます。
飲食店:多言語メニュー、QRコードで読み込むモバイルオーダー、アレルギーや宗教(ハラル・ベジタリアンなど)に配慮した表記。メニューの多言語化は最優先のひとつです。
宿泊施設(民宿・ゲストハウス含む):多言語での予約・館内案内、自社サイトや予約ページの多言語化、周辺の見どころ紹介。
物販・土産・特産品店:多言語のPOPや商品説明、キャッシュレス・多通貨決済、そして来訪後も買える越境EC・お取り寄せの仕組み。
観光施設・寺社:多言語の解説(QRコードや音声ガイド)、見どころや巡り方の多言語案内。
すべての業種に共通:Googleビジネスプロフィール(MEO)の多言語整備、無料Wi-Fiやキャッシュレス環境の用意。
来訪者は「旅行前・旅行中・旅行後」で動く
来訪者、とくにインバウンドの行動は「旅行前・旅行中・旅行後」の3つの局面に分けて考えると、打つべき手がはっきり見えてきます。旅行前はスマホでの事前リサーチ、旅行中は現在地周辺の検索、旅行後はお取り寄せや口コミの発信。それぞれの局面で「見つけてもらい」「選んでもらう」ための準備が必要です。この3局面に沿って、地域の事業者が今やるべきデジタル対策を見ていきましょう。
旅行前・旅行中・旅行後でやるべき3つの対策
① 旅行前 ― 事前に調べてもらう(多言語サイト+SEO)
旅行者の多くは、訪れる前に行き先や店を検索して計画を立てます。観光庁の調査でも、出発前に役立った情報源としてSNSが最上位クラス(約4割)に挙がり、宿泊施設や店舗の公式サイトも一定の割合を占めています。この段階は、Webサイトに必要な情報がきちんと書いてあれば大体カバーできます。営業時間・アクセス・商品やメニュー・予約方法といった基本情報を、日本語だけでなく英語をはじめとする多言語で用意しておくこと。さらに「橿原 ランチ」「飛鳥 お土産」といった検索で見つけてもらえるようSEOを整えておけば、行き先の候補に入る確率が高まります。実際、訪日客が旅行中に困ったこととして「スタッフとのコミュニケーション」「多言語表示の少なさ」が依然として上位に挙がっており、とくに小売店や飲食店ではこの課題が大きいと報告されています。海外からの来訪者にとって、日本語だけのサイトは「情報がない」のと同じ。要点だけでも多言語化することが第一歩です。
② 旅行中 ― 位置情報で見つけてもらう(Googleマップ最適化/MEO)
旅行中の検索は、「今いる場所の近くに何があるか」という位置情報ベースのものが大半です。旅行者が混雑で困った内容のトップは「混雑や渋滞などの情報が発信されていない・情報量が不足」で、都市部・地方部とも41%にのぼりました(観光庁「令和6年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート調査」)。裏を返せば、現地で情報を探している人に、情報がきちんと届けられていないということ。ここに大きなチャンスがあります。「近くのカフェ」「周辺の観光スポット」と検索したときに表示されるかどうかは、Googleビジネスプロフィールの最適化(MEO)にかかっています。店舗の位置・営業時間・写真・最新情報を正確に整え、地図上で見つけてもらえる状態をつくることが、現地での集客に直結します。Webマーケティングとして、この地図最適化は必ず押さえておきたいポイントです。
③ 旅行後 ― 買ってもらい、口コミで次につなげる(EC+レビュー)
旅行後には2つの機会があります。1つはEC。「現地で気に入ったが荷物になるので買えなかった」「帰ってからもう一度買いたい」——こうした需要をオンライン販売で刈り取れば、来訪のピークが過ぎても売上が続き、遠方のファンにも届きます。そしてもう1つ、見落とされがちなのが口コミです。先述のとおり、出発前の情報源としてSNSは約4割を占めます。つまり、満足した来訪者が投稿したレビューやSNSは、そのまま次の来訪者の「旅行前リサーチ」の判断材料になります。口コミは、一人の来訪者を次の来訪者へとつなぐ循環の起点なのです。買ってもらって終わりではなく、語ってもらうところまで設計することで、世界遺産効果を一過性で終わらせず、継続的なものに変えられます。
なぜ「登録前の今」がベストタイミングなのか
7月の正式登録が報じられると、関連する検索や来訪は一気に増えます。そのときに準備ができていなければ、せっかくの注目を取りこぼしてしまいます。Webサイトの多言語化やEC構築には、企画から公開まで一定の準備期間が必要です。検索エンジンに評価され、上位に表示されるようになるのにも時間がかかります。だからこそ、登録が報じられる前の今こそ着手の好機なのです。
地域のWebパートナーとして、INVOLVEができること
INVOLVEは橿原を拠点に、Webサイト制作・多言語対応・ECサイト構築・SEO/MEO対策まで一貫してお手伝いしています。Webだけにとどまらず、店頭の多言語看板やチラシといった紙媒体、さらに地域やお店の魅力を伝える映像コンテンツの制作までご相談いただけます。同じ地域で事業を営む立場だからこそ、地元の魅力も、事業者のみなさまの事情も理解した上でご提案ができます。「何から始めればいいか分からない」という段階のご相談も歓迎です。この歴史的な機会を、地域全体の追い風に変えていきましょう。
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出典
観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年(速報)」— 旅行消費額9兆4,559億円(前年比+16.4%、暦年過去最高)、1人当たり22.9万円 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00071.html
観光庁「令和6年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート調査結果(令和7年4月)」— 困った場所として飲食店が最多(コミュニケーション都市部54%/地方部49%、多言語表示ともに33%)、多言語表示を便利と感じた割合(都市部88%/地方部59%)、多言語表示で困り「解読をあきらめた」約3割、混雑で困った内容トップ「情報が発信されていない・不足」41% 報道発表:https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00022.html / 調査結果PDF:https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001882887.pdf
奈良県「県宿泊統計調査」— 2024年の延べ宿泊者数329万6,688人(前年比+12.2%、2009年統計開始以来過去最多) 奈良県観光データポータル「みるなら」:https://nara-tourism-data.pref.nara.jp/ / 観光客動態調査:https://www.pref.nara.jp/10071.htm
奈良市「2024年 観光入込客数調査」— 外国人宿泊者44.5万人(過去最多)、外国人訪問者297.7万人(前年比+61.4%) https://www.city.nara.lg.jp/site/press-release/241572.html




