セミの大合唱で目が覚めて、スマホを開いたらドメインのニュースでため息をつく、どうもインヴォルブ吉村です。今日は珍しく時事ネタからいきます。万博の話と浅田真央さんの話。そこから「ドメインの終わり方」っていう、地味やけどめちゃくちゃ大事な話を、普段カタカナ言葉に縁がない人にも伝わるように書いてみますわ。
万博の跡地がえらいことになってる
2026年7月29日、大阪・関西万博の協会がこんなお知らせを出しました。「過去に協会関連事業で使っていたドメインは運用を終了していて、第三者に使われている可能性があります」。
要するに、「昔うちのサイトやったあの住所、もう別の人が住んでるんで注意してな」ということです。
ほんで調べた人がおって、蓋を開けたらすごかった。案内に載ってたドメインが、軒並み別の誰かに再取得されてました。ジュニア万博のドメインは成人向け漫画サイトに。別のドメインはアフィリエイトサイト(紹介報酬で稼ぐサイトのことです)に。コンタクトレンズの販売ページに転送されるやつまでありました。
あの万博の、公式関連サイトやった場所が、ですよ。
さらに先日は、浅田真央さんの旧公式サイトのドメインが、ドメイン販売会社のオークションに「アフィリエイトサイトに」みたいな売り文句付きで出品されて、ちょっとした騒ぎになりました。
ドメインっていうのは、ホームページの住所のことです。involve-in.jpみたいな、あれです。この住所、実は結構あっさり、他人のものになるんです。
ドメインは「買う」んやなくて「借りてる」
ここが今日いちばん知っといてほしいところなんですけど、ドメインは「買う」ものやなくて「借りる」ものなんです。
年間の更新料を払い続けてる間だけ、自分のもの。金額はだいたい年間5,000円から1万円というところです。この金額、あとでもう一回出てきます。
ほんで、更新をやめたらどうなるか。一定期間のあと、誰でも取得できる状態に戻ります。早い者勝ちです。
しかも世の中には、手放されるドメインを狙って再取得する「ドロップキャッチ」っていう商売がちゃんとあります。有名なサイトが使ってたドメインには、アクセスも残ってるし、いろんなサイトからのリンクも残ってる。検索エンジンからの信用が、資産として残ってるわけです。
万博クラスの知名度なら、そらもう上物付きの優良物件ですよ。退去した瞬間に次の入居者が決まる。しかも前の住人の看板を掲げたまま、中身だけ入れ替えて商売できてしまう。
実はルール、あるんです
「国はなんも決めてへんのかいな」と思うでしょ。それが、あるんです。
デジタル庁が出してる「ドメイン管理ガイドライン」という文書があって、元をたどれば2018年から存在します。中身も結構ちゃんとしてます。サイトを閉じる前に運用停止の案内を出すこと。閉じたあともドメインを1年以上保持すること。第三者に取られて利用者が困らんように対策してから手放すこと。「このドメインは第三者が取得する可能性があります」という案内文の例文まで載ってます。
せやのに、なんで万博で事故が起きるのか。
理由は単純で、このルールが適用されるのは省庁とか独立行政法人とか、いわゆる「国の機関」だけやからです。万博協会は公益社団法人なので、対象外。浅田真央さんの公式サイトは言わずもがな。
つまり、事故が起きやすい場所ほど、ルールの外側にあるんです。イベントの実行委員会、キャンペーンの特設サイト、タレントの公式サイト。期間限定で作られて、終わったら管理する人がおらんようになるサイトほど危ない。
301と410、聞いたことありますか
ここからちょっとだけ技術の話をさせてください。大丈夫、数字を3つ覚えるだけです。
ホームページの住所にアクセスすると、サーバー(サイトのデータが置いてあるコンピューターです)が「返事の種類」を数字で返してます。これをステータスコードと言います。
301は「引っ越しました。新しい住所はこちら」。アクセスした人を自動で新しいサイトに連れて行ってくれます。リダイレクト(自動転送)というやつですね。
404は「見つかりません」。よく見るやつです。ただこれ、「いまは見つからんだけで、また戻ってくるかもしれん」という曖昧な返事なんです。
ほんで410。「Gone」、つまり「もうありません。二度と戻りません」という正式なお別れ宣言です。
この違い、何に効くかというと、検索エンジンへの伝わり方が違うんです。404は「消えたんか、たまたま調子が悪いんか、判断つかんな」という受け取られ方。410は「意図して消したんやな」とはっきり伝わるので、検索結果からの片付けも少し早いと言われてます。正直、時間がたてばどっちも消えるんですけど、「もう終わりました」と自分の口から言うか、察してもらうかの違いです。サイトの終わり方として、いちばん誠実な返事なんですよ。
で、さっきのデジタル庁のガイドライン。「ドメインを保持しろ」とは書いてあるんですけど、「保持してる間、何を返すか」までは書いてないんです。技術屋としては、ここまでセットで決めてほしいなと思うわけです。
年5,000円をケチって、信用を失う
さっきの金額、ここで戻ってきます。ドメインは年間5,000円から1万円。仮に事業が終わってから3年間持ち続けたとして、合計1万5,000円から3万円です。
万博の関連事業なら、ひとつのサイトを作るのに数百万、数千万の予算が動いてたはずです。それと比べたら、何パーセントどころか、小数点の下のほうの話です。
そもそも論を言うと、本体のドメインの中でやってれば、この事故は起きへんのです。expo2025.or.jpの中に部屋を作る(サブディレクトリと言います)か、本体にぶら下がる住所(サブドメイン)を使うか。事業が終わっても住所ごと本体に残るから、乗っ取りようがない。実はデジタル庁のガイドラインにも、サブドメインの活用が有効やと書いてあります。
ほな、なんでみんな新しいドメインを取ってまうのか。
現場の事情は、正直わかるんです。ページごとに作る業者が違う。本体のサーバーを触らせてもらおうと思ったら、管理してる会社と調整して、権限をもらって、確認を取って。その連絡のやりとりの手間(コミュニケーションコストというやつです)を考えたら、「新しいドメイン取ったほうが早いわ」となる。
でもその「早いわ」のツケが、数年後に成人向けサイトになって返ってくるわけです。
もうひとつ、公募案件には「事業期間」というものがあって、期間が終わったら予算も切れます。サイトの制作費は仕様書に書いてあっても、「終わったあとのドメインの扱い」まで書いてる仕様書は、まず見たことがない。誰も悪気はないんです。ただ、事業が終わった瞬間に、あのドメインたちは「予算の付かへん子」になってしまう。
せやから、僕の提言はこうです。入札の段階で、終わり方まで契約に巻いてしまう。「事業終了後、ドメインは数年間保持し、410を返して、静かに看取ること」まで仕様書に書く。もしくは、ドメインの取得と管理は発注する官公庁側が持って、業者には使わせるだけにする。これなら業者が何社入れ替わっても、住所は残ります。
かかる保険料は、さっき言うたとおり3年で3万円ほど。破格に安いと思いませんか。
なんなら「どうしたらええかわからんドメイン、僕が預かります」っていう商売、年3万円くらいで始めよかなと思うほどです。笑い話みたいですけど、ほんまにその程度の金額で防げる事故なんです。
ほな、どうしとくのがええのか
まとめると、やることは3つだけです。
ひとつ。いちばん強いのは、手放さんこと。年間数千円で乗っ取りが100%防げるんやから、迷ってるくらいなら持っとく。
ふたつ。終わらせるなら、順番を守る。閉鎖の案内を出して、しばらくしたら410を返して、検索エンジンからも人の記憶からも消えた頃に、ようやく手放す。ドメインにも終活が要るんです。
みっつ。さっきも言いましたけど、作り始める最初の契約の時点で、終わり方まで決めとくこと。誰が持って、いつまで持って、最後に何を返すか。
ほんで、これは自戒でもあります。「終わったあとのドメイン、どうします?」って、最初の見積りの段階で聞いてきたかというと、僕も正直、毎回はできてなかった。作る話は盛り上がるけど、終わる話は誰もしたがらへんのですよ。結婚式の日に離婚の話をするみたいで。
でも、住所を借りて看板を出すというのは、そういうことなんですよね。終わり方まで含めて、サイトの設計なんやと思います。
あなたの会社にも、終わったキャンペーンのドメインとか、リニューアル前の古いドメインとか、転がってませんか。更新の請求書が来たときに「これもう要らんやろ」って切る前に、一回だけ思い出してください。その住所、次に誰が住むかわからんということを。
ほな、また。



