ここ数日、OpenAI・Google・Anthropic が新モデルを怒涛のように発表しています。特に Google の Gemini 3。あれは、ウェブ制作に長く関わってきた当事務所としても、正直かなりの衝撃でした。なにせ、「それっぽいデザイン」なら1発で破綻なく出してくる。SNSで「もうウェブデザイナーいらなくない?」という声が出るのも理解できます。
でも数日触り倒してみて、僕の中ではむしろ逆の結論にたどり着きました。AIが得意なことより、AIがどうしても苦手なところのほうが、よりハッキリしてきた。今日は、その気づきをまとめます。
1. AIは「フッターの美学」をまだ理解していない
AIのデザイン生成を見ていて最初に気づくのがこれ。フッターが圧倒的に弱い。これは単なるセンスの問題ではなく、構造的な理由があると思っています。フッターの「正解形」が世の中に少ない多くのサイトがなんとなく整っているだけで終わっている。つまり学習データに「理想のフッター」が存在しない。情報構造が複雑なので、AIの推測が外れやすい。
AIはヘッダーやヒーローは上手いのに、フッターになると急にバランスを崩す理由はここにあります。逆に言えば、フッターまで美しく構造設計できるデザイナーは、AI時代の強者になる。全体を読み、終わりを整えられる人間はまだまだ替えが効かない。
2. AIは「あなたが何を作りたいのか」を永遠に理解できない
これがAIの根本的な限界です。AIには目的がわからない。誰に届けたいのか。何を伝えたいのか。どんな世界観を作りたいのか。どんな導線がビジネスを伸ばすのか。どの価値を優先し、どれを切り捨てるのか。
これらは「人間の内部にある前提条件」なので、AIは読み取れない。だからどれだけモデルが進化しても、文脈を構築する役割はAIには絶対に奪えない。
むしろここが、デザイナー・ディレクター側の価値として急激に重くなってきている。
3. 開発工程を理解できない:そしてモデルの使い分けも必要
AIをしっかり使ってみると、もうひとつの弱点が浮き彫りになる。AIは「工程」という概念をほとんど理解していない。
調査
要件整理
構成
ワイヤー
デザイン
フロントエンド
バックエンド
テスト
これをすべて1つのAIに丸投げすると、AIは混乱する。急に知らないコンポーネントを生やしてきたり、勝手に別案を作り始めたり。さらに厄介なのが、フロントエンドとバックエンドで、相性の良いAIモデルが全く違う。
UI構築 → モデルAが強い
API/DB設計 → モデルBが適任
セキュリティ → また別モデルが安定
Gatsby/Next → モデルのバージョン知識の差がでかい
つまり、AIには万能選手がいない。
そしてもっと本質的な問題はこれ。「そもそもAIに何を頼めばいいのか」を知らなければ、プランニングできない。
スキーマ設計の知識
APIの役割
認証の考え方
SEOの基礎
インフラ構造
適切なビルド方法
こうした前提知識がないと、AIを使っても結局ぐちゃぐちゃになる。だからAI時代で強い人間は、「作れる人」ではなく「設計できる人」。ここが決定的な時代の変化です。
4. ディレクションの重要性:AI時代こそフロントマンが価値を持つ
よく「なんで吉村さんはデザインからマーケティング、システム開発まで全部詳しいんですか?」と聞かれます。答えはシンプルです。クライアントは何を作ればいいかを知らないからです。
どんなサイトが必要?どんな訴求が刺さる?何がボトルネック?どの技術を選ぶべき?どう動線を設計すべき?
クライアント自身がこれらを判断できるケースはほぼありません。むしろわからないから相談してくれる。 だからこちらはWeb領域すべての知識を横断的に持ち、最適解を提案する力を常に磨いておく必要がある。そして今、クライアント側でもAIを使ってWebサイトを作れる未来は近いところまで来ています。ただし問題はそこではなく、AIをどう使えば、自分のビジネス課題が解決するのか?
この“プランニング能力”の有無が、今後とんでもない差を生む。知っているか知らないか。判断できるかできないか。
これはWebプロデューサーにとって、AI時代に戦うための最大の武器になる。AIが作業を肩代わりするほど、設計し導く人間の価値はむしろ高くなる。
AIは革命だけど、「意味づくり」は人間の仕事。
AIは確かにすごい。でも実際に触ってみて思うのはただひとつ。AIは表現を作れても、意味を作れない。
目的
文脈
優先順位
世界観
価値
課題設定
道筋の設計
これらは人間が担うべき領域であり、AIが踏み込めない場所。つまりAI時代の制作者は、手を動かす人から、意味を作る人へと進化しなければいけない。AIが世界を平均化していく時代に、「意図」と「判断」と「美意識」を持つ人間が光る。その時代が、いよいよ本格的に始まった。




